市役所の仕事は本当にツラい？楽？元職員の体験談から見る実態

市役所の仕事は「安定している」と思われがちですが、実際に働いてみるとクレーム対応や頻繁な異動、人間関係や給与面などで大きなストレスを抱える職員は少なくありません。

ぼく自身、地方公務員として約20年勤務した経験から言えるのは「辛い」と感じるのは特別なことではない、ということです。

本記事では、市役所の仕事が辛いといわれる理由や、具体的な対処法、そして転職を含めた今後のキャリアの選択肢まで解説します。

市役所の仕事が「ツラい」と言われる理由

市役所の仕事は一見すると安定して見えますが、実際に働くと多くの職員が「ツラい」と感じる瞬間に直面します。

その背景には、市役所ならではの業務構造や市民対応の特性があります。

ここでは代表的な要因を具体的に整理します。

窓口対応や電話対応でのクレーム処理

窓口や電話で寄せられる苦情は、職員にとって最も精神的に負担となる場面です。制度に不満を持つ市民は、感情的になって怒鳴ることもあり、長時間対応が続く場合もあります。

こうした対応が日常化すると、業務以外の部分で心身を消耗してしまい、「辛さ」を実感しやすくなります。

住民からの理不尽な要望・無茶な申し出

法律や制度に反して対応できない依頼を受けることは少なくありません。

しかし、市民の側は「税金を払っているのだから応じて当然」と考える場合もあります。

職員は説明を繰り返しても理解されないことが多く、無力感やストレスを募らせる要因になります。

頻繁な部署異動によるストレス

市役所職員は数年単位で異動があり、専門外の分野を急に担当することも珍しくありません。

異動によって人間関係が一からやり直しになる点も大きな負担です。

適応を求められる頻度が高く、ストレスを抱える職員は少なくありません。

上司の指示が絶対で柔軟性がない職場環境

市役所は前例踏襲を重視するため、現場職員の裁量が限られています。

改善提案をしても受け入れられにくく、結果的に上司の指示に従うしかない場面が多いのです。

自分の意見が通らない状況は、やりがいの低下につながります。

残業や休日出勤が多い

「公務員＝定時で帰れる」というイメージとは異なり、市役所では残業や休日出勤が発生することが珍しくありません。

特に年度末や災害対応、選挙業務の時期は業務量が急増します。

こうした業務が重なると、生活のリズムが崩れ、私生活への影響も避けられません。

意味を見出しにくいやりがいの少ない業務

書類処理やデータ入力などの単純作業が多く、成果が見えにくいのが市役所の仕事の特徴です。

住民の役に立っている実感が持てず、モチベーションの低下につながります。

「社会に貢献しているはず」と思っても、実感とのギャップに苦しむ職員は少なくありません。

給料の低さと昇給の限界

給与は安定していますが、伸び幅は小さく、努力がすぐ収入に反映されません。

特に都市部で暮らす若手職員は生活費に余裕を持ちにくいのが実情です。

特徴	内容
初任給	民間と比べると低め
昇給	年功序列で緩やか
成果反映	成果を出しても大幅アップは稀

安定性は魅力である一方、収入面では物足りなさを感じやすいのが現状です。

濃い人間関係・狭い職場コミュニティ

市役所は部署ごとの人数が少なく、人間関係が密になりやすい職場です。

相性が合わない相手がいると逃げ場がなく、ストレスの原因になります。

限られた空間で人間関係に悩む職員は多く、精神的な負担につながります。

プライベートでも「公務員」として見られる負担

勤務外でも「市役所の人」として扱われる場面が少なくありません。

特に地域行事や近所付き合いでは、仕事に関する相談を持ちかけられることもあります。

仕事と生活の境目が曖昧になり、心からリラックスできないことが辛さの一因です。

市役所で特にきつい部署・業務

市役所の業務は幅広いですが、その中でも特に精神的・肉体的な負担が大きい部署があります。

ここでは代表的な「きつい」と言われる業務を紹介します。

窓口・市民対応の部署

窓口業務は、市役所の中で最もストレスが溜まりやすい仕事です。

来庁者の対応は1件ごとに内容が違い、手続きが分かりにくいとクレームになることも珍しくありません。

市役所職員の「辛さ」の多くは、この窓口対応から始まります。

福祉・税務などクレームが多い部署

福祉や税務の部署は、市民生活に直結しているためトラブルが絶えません。

支給や納税に不満を抱えた市民から、厳しい抗議を受けることが多いのです。

正しい説明をしても感謝されにくく、心がすり減りやすい部署です。

外回りや資料作成業務

庁舎内だけでなく、現場に出向く業務も多くあります。

道路や建物の点検、地域イベントの対応など外回りは体力を消耗します。

そのうえ戻ってから資料や報告書の作成が待っています。

「外」と「中」の業務を両立する難しさが、強いストレスにつながります。

財務・制度改正対応など繁忙期の多い業務

財務や制度改正に関わる部署は、時期によって仕事量が大きく変動します。

特に予算編成期や制度改正時は、短期間で膨大な業務をこなさなければなりません。

繁忙期の特徴	内容
予算編成期	数字や資料を期限までに大量処理
制度改正時	住民説明用の資料を短期間で作成
繁忙の影響	連日の残業・休日出勤が発生

一時的とはいえ、この時期の負担は非常に大きく、体調を崩す職員も少なくありません。

災害・緊急対応関連業務

災害や緊急時の対応は、市役所ならではの重責です。

地域の安全を守るため、勤務時間外であっても即座に呼び出されることがあります。

使命感は大きいものの、その裏で心身に大きな負担がのしかかります。

市役所職員のメリットとやりがい

市役所職員は「辛い」と言われる一方で、安定性や社会的信用など他の仕事にはない魅力も持っています。

ここでは、職員として感じられる代表的なメリットややりがいを整理します。

安定した雇用と福利厚生

市役所は地方自治体の組織であるため、景気に左右されにくく、解雇のリスクも低いのが大きな特徴です。

加えて、社会保険や休暇制度など福利厚生が充実しており、長く安心して働ける基盤があります。

安定を重視する人にとっては、大きな魅力となる要素です。

ノルマがなく安心して働ける

民間企業では売上や成果に追われる場面が多いですが、市役所の業務は市民サービスを中心としており、営業ノルマがありません。

もちろん業務量は多いものの、「数字に追われる」ストレスは少ないです。

安定的に働きたい人にとって安心感が大きい職場といえます。

地域社会に直接貢献できる

市役所の仕事は、住民生活を支える役割そのものです。

道路整備や福祉サービス、子育て支援など、地域への影響が目に見える点にやりがいを感じる職員も多いです。

「自分の仕事が地元を良くしている」という感覚は、公務員ならではのやりがいです。

転勤が少なく地元志向に合う

民間企業と違い、市役所職員は基本的に同じ市内での勤務となります。

地元に根ざして働き続けたい人にとって、これは大きなメリットです。

特徴	民間企業	市役所
転勤	全国や海外に異動の可能性あり	市内・近隣のみ
生活基盤	引っ越し頻度が高い	同じ地域で安定
家族への影響	配偶者や子どもの生活も変わりやすい	ライフプランが立てやすい

特に結婚や子育てを見据えた世代にとっては、地元で長く暮らせる安心感があります。

公務員という社会的信用

「公務員」という立場は、社会的な信用につながります。

住宅ローンや賃貸契約などで有利に働くこともあり、生活の安定を後押しする要素です。

仕事そのものだけでなく、人生設計全体においてプラスに働くメリットです。

市役所職員に向いている人・向いていない人

市役所職員は安定性が魅力ですが、誰にでも向いている仕事ではありません。

ここでは、適性を具体的に整理し、どんな人が働きやすいのか、逆に苦労しやすいのかを見ていきます。

向いている人

市役所職員に向いているのは、安定性や協調性を大切にできるタイプです。

成果主義よりもチームワークや地域貢献を重視する人は、長く働きやすい環境だといえます。

このような人であれば、市役所の環境に馴染みやすく、やりがいを感じながら勤務できます。

向いていない人

一方で、市役所職員に不向きな人もいます。

特にスピード感や挑戦を求めるタイプは、制度や組織の仕組み上、フラストレーションを溜めやすいです。

市役所は前例踏襲が多いため、主体的に改革を進めたい人ほど物足りなさを感じやすい傾向にあります。

向き・不向きの比較

読者が自分に当てはまるかどうかを直感的に確認できるように、向いている人と向いていない人の特徴を表で整理しました。

項目	向いている人	向いていない人
働き方の志向	安定・着実	成果・スピード
地域性	地元志向が強い	転勤や環境の変化を楽しみたい
人間関係	協調性があり調整役が得意	自主性が強く指示に従うのが苦手
キャリア観	安定した長期キャリアを築きたい	挑戦や変化でキャリアを広げたい

この比較を参考に、自分の性格や志向性と照らし合わせて考えると良いでしょう。

辛さを乗り越える工夫・対処法

市役所の仕事には独特のストレスがつきものですが、工夫次第で負担を軽減できます。

ここでは、現職員や元職員が実際に取り入れている対処法を具体的に紹介します。

クレーム対応を「仕事の一部」と割り切る

住民からの不満や抗議は避けられないものです。

感情的に受け止めず「役所職員として果たすべき役割」と捉えると、心の負担が軽くなります。

割り切る姿勢を持つことで、消耗を最小限にできます。

柔軟な思考でストレスを和らげる

「こうあるべき」と思い込みすぎると、理不尽な出来事に耐えられなくなります。

柔軟に考える習慣を持つことで、ストレスを感じにくくなります。

状況の捉え方を変えることが、心の余裕につながります。

職場以外の居場所を持つ

職場内だけに生活が偏ると、人間関係や業務の悩みが大きく感じられてしまいます。

趣味やコミュニティなど、外部に安心できる場を持つことが有効です。

職場以外に居場所があれば、気持ちの切り替えがしやすくなります。

メンタルヘルス対策や相談窓口の活用

公務員には、職員向けの相談窓口やカウンセリング制度が用意されている自治体もあります。

専門家の力を借りることで、早い段階で心の不調を防げます。

活用できる制度	内容
職員相談窓口	職場内の悩みを匿名で相談可能
EAP（従業員支援プログラム）	外部の専門機関によるカウンセリング
医務室・産業医	精神面も含めた健康相談ができる

自分だけで抱え込まず、制度を頼るのも賢い選択です。

チームでの役割分担と協力体制

1人で全てを抱え込むと疲弊しやすいですが、同僚と役割を分担することで業務がスムーズになります。

協力し合える環境づくりが重要です。

チームワークを強めることで、働きやすさが大きく向上します。

オンオフを切り替える習慣を持つ

公務員は「常に見られている」という意識から、気持ちの切り替えが難しい場合があります。

意識的にオンオフを分ける習慣を持つことが大切です。

オフの時間を意識的に確保することで、心身のリフレッシュにつながります。

市役所の仕事が辛いと感じたら

「もう限界かもしれない」と思ったとき、無理に我慢を続けるのは危険です。

休職や副業準備、転職など複数の選択肢を知っておくことで、自分の未来を冷静に考えやすくなります。

自己啓発等休業制度の活用

多くの自治体には「自己啓発等休業制度」があり、一定期間仕事を離れて学び直したり、留学したりすることが可能です。

心身を休めながらスキルを伸ばす選択肢となります。

一時的に現場を離れることで、新しいキャリアの可能性を模索できます。

副業やスキルアップの準備

最近は副業を認める自治体も増えており、スキルを磨くチャンスが広がっています。

副収入を得ながら将来のキャリアに備えることが可能です。

本業とのバランスを取りつつ、新しい経験を積むことができます。

公務員から民間企業への転職は増えている

近年は、公務員から民間企業へ転職する人も増加しています。

特にITや福祉分野などは自治体経験が評価されやすく、キャリアの幅を広げやすいです。

転職で評価されやすいスキル	活かせる業界
住民対応で培った調整力	サービス業・人事・営業
書類作成・制度理解	企業の管理部門
災害・緊急対応経験	防災関連企業・NPO

市役所の経験は決して無駄にならず、異業種で活かす道が開かれています。

自分の市場価値を知るために転職エージェントに相談する

「辞めたいけど踏み切れない」という場合は、転職エージェントに相談するのも有効です。

第三者から客観的に市場価値を教えてもらうことで、自分に合った選択肢を見極められます。

情報を得るだけでも気持ちが楽になり、次の一歩を踏み出しやすくなります。

市役所を辞めるメリット・デメリット

市役所の仕事を辞めるか悩んでいる人にとって、一番気になるのは「その後のリスクと可能性」です。

メリットとデメリットを整理して、自分にとって本当に良い選択かを見極めましょう。

辞めるメリット

市役所を辞める最大の利点は、新しい可能性が広がることです。

民間企業やフリーランスの道に進むことで、成果次第で収入が増えたり、やりがいを感じる仕事に出会えるチャンスがあります。

現状に閉塞感を覚えている人にとって、転職は新しいキャリアの扉を開くきっかけになります。

辞めるデメリット

一方で、市役所を辞めると「安定」を失うのは事実です。

収入が不安定になる可能性や、新しい職場に馴染むストレスは避けられません。

特に生活基盤を支える家族がいる人は注意が必要です。

メリットとデメリットを天秤にかけ、自分がどちらを優先したいかを明確にすることが重要です。

公務員の今後とキャリアの考え方

公務員の仕事は安定している一方で、社会の変化に伴い求められるスキルや働き方も変わりつつあります。

将来を見据えてキャリアをどう築くかを考えることが大切です。

デジタル化による業務の変化

行政手続きのオンライン化やAIの導入により、事務処理の効率化が急速に進んでいます。

これまでのような紙ベースの作業は減り、デジタルツールを使いこなすスキルが必要になります。

特に若手職員は、デジタル分野での適応力が求められるでしょう。

多様な働き方や副業解禁の流れ

働き方改革の一環として、フレックスタイム制やテレワークを導入する自治体も増えています。

さらに、一部の自治体では副業が認められるようになり、個人のスキルを活かせる環境が広がっています。

これにより「公務員は一つの働き方しかできない」という固定観念が変わりつつあります。

公務員制度改革の方向性（週休三日制）

週休三日制の導入を検討する自治体も出てきています。

もし実現すれば、ワークライフバランスの改善だけでなく、副業や自己研鑽の時間が確保できる可能性も高まります。

制度改革はまだ途中段階ですが、公務員の働き方は今後大きく変わるかもしれません。

異動をチャンスと捉えるマインドセット

頻繁な部署異動はストレスの原因になりがちですが、見方を変えればスキルの幅を広げる好機でもあります。

異動先ごとに学べる経験を積極的に活かすことで、将来的に柔軟なキャリアを築けます。

「キャリアの引き出しを増やす期間」と捉える姿勢が、成長につながります。

専門性と汎用性のバランスを意識したキャリア形成

公務員として長く働くには、幅広い分野に対応できる汎用性と、特定分野での専門性の両方が重要です。

例えば、福祉・防災・ITなど得意分野を持ちながら、他部署でも通用する基礎スキルを磨くことで強みになります。

このバランスを意識することで、将来のキャリアの選択肢が広がります。

まとめ

市役所の仕事が「辛い」と言われる理由から、具体的な部署や業務の大変さ、そしてやりがいや将来のキャリアの考え方まで幅広くご紹介しましたが、気になっていた疑問や不安は少し解消できたでしょうか。

市役所職員は地域の暮らしを支える大切な存在であり、その努力によって私たちの日常が成り立っています。

もし今「続けるべきか悩んでいる」と感じているなら、まずは一人で抱え込まず、選択肢を知ることから始めてみてください。

また、公務員試験の勉強やキャリアチェンジを考えている方は、【公務員試験の通信講座・予備校ランキング】の記事もぜひ参考にしてみてください。

あなたのキャリアには、必ず新しい可能性が開けています。